MRは製薬会社に勤務し、医薬品の効果や使い方などの情報を医師をはじめとする医療関係者に提供する役割を果たしています。MRになるには、まず製薬会社に入社し、必要に応じて資格を取得します。
本記事では、MRの一般的な仕事内容と働き方、関連資格について触れ、MRになる3つの方法を解説します。MRを目指す方は、どのような道筋からMRになるかを考える際の参考にしてみてください。
MRとは|製薬会社に所属し医薬品の情報を提供する
MR(Medical Representatives)とは、日本語で医薬情報担当者と訳される職種です。「医薬品等の製造販売後安全管理の基準に関する省令」では、MRを以下のように定義づけています。
第二条の5 |
この省令で「医薬情報担当者」とは、医薬品の適正な使用に資するために、医療関係者を訪問すること等により安全管理情報を収集し、提供することを主な業務として行う者をいう。 出典:e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp) |
省令からもわかるとおり、MRの仕事は、安全かつ効果的に医薬品を使用してもらうために、医療関係者に正しい情報を提供することです。
医薬品は使い方を間違えると、効果を発揮するどころか薬害をもたらすリスクがあります。したがって、MRは正しい情報提供によって、薬による事故を未然に防ぎ、適正使用を推進する役割を担っています。
なお、製薬会社またはCSO(医薬品販売業務受託機関)に所属し、担当する医療機関に足を運んで仕事をするケースが一般的です。
ここでは、以下の3つの観点から、MRについてより詳しく解説します。
- MRの仕事内容
- MRの働き方
- MRの年収
MRの仕事内容
医薬品情報のスペシャリストであるMRの仕事は、大きく分けて2つあります。
- 医療関係者に対し、医薬品の効果・安全性など科学的根拠に基づく正しい情報を提供する
- 自社の医薬品に関するデータを収集、会社にフィードバックし、開発・研究につなげる
情報提供の際は、文献やパンフレット、ときには自分でまとめた資料を使います。また、医療関係者向けに講演会や勉強会を主催することもあります。
医療関係者への情報提供の結果、最終的に自社の医薬品を使ってもらうことも狙いのひとつです。ただし、医薬品の情報提供の範囲は法律で決められており、自社の医薬品を買ってもらうために効果を誇張したり過度にPRすることは「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」によって禁止されています。
MRは、あくまで客観的かつ科学的根拠に基づき、公正な視点で情報提供を行う必要があるため、医薬品の販売活動からは切り離された職種です。医薬品の販売を担当するのは、医薬品卸売企業に所属するMS(Marketing Specialist)であり、仕事内容が異なります。
ただし、同じフィールドで働く職種同士であるため、お互いに寄せられた情報をフィードバックし合って、役割を果たせるように協力し合うことが一般的です。
MRの働き方
MRは、製薬会社またはCSO(Contract Sales Organization)に所属するケースがほとんどです。CSOとは、医薬品販売関連業務の受託会社で、製薬会社からの要請を受けてMRを派遣したり、職務を請け負ったりします。
どちらに所属していても、MRの仕事内容と働き方は大きく変わりません。
地域ごとに担当が決められていることが多く、担当範囲にある医療機関に訪問し、医療関係者とコミュニケーションを取ります。多忙な医療関係者と面談できる時間は限られているため、早朝や夜間の訪問になることもあります。
最近では、時代の変化とインターネットの普及から、オンラインでのやりとりも増えており、働き方の変化もうかがえます。
厚生労働省の「職業情報提供サイトjobtag」によると、労働時間の全国平均は167時間/月となっています。「毎月勤労統計調査 令和5年12月分結果確報」の一般労働者の総実労働時間は163.8時間/月であるため、比較するとMRの方がやや労働時間が長いでしょう。ただし、双方の数値はそれぞれ別の調査から抜粋しているため、単純に比較できない点にはご留意ください。
MRの年収
MRの年収は、給与所得者の平均給与と比較すると高めで、全国平均で578.3万円とされています。
地域 | MRの平均年収(※1) | 給与所得者の平均給与(※2) |
全国 | 578.3万円 | 458万円 |
東京 | 628.6万円 | - |
※1 参考:職業情報提供サイトjobtag|厚生労働省
※2 参考:令和4年分 民間給与実態統計調査|国税庁
薬学や医学の知識が必要となり、専門性が高いことから、一般的な給与よりも高い傾向にあると推測できます。
MRに関連する資格
MRになるにあたって、必要な資格や学歴はありません。ただし、MRに就業している方の89.4%は大卒(※)であることから、大卒資格は持っておいた方が有利といえます。
MRになる、またはなったあとに活かせる資格は、以下の2つです。
- MR認定制度
- 医師・歯科医師・薬剤師免許
それぞれの資格について、詳しく解説します。
MR認定制度
MR認定制度は、医薬品の適正使用の推進とMRの資質向上のため、1997年から運用されている資格試験制度です。製薬会社またはCSOに入社後、社内教育の一環として活用されているケースが多いようです。
ただし、製薬会社またはCSOに入社していなくても、MR教育センターの認定を受けた施設で300時間の基礎教育を受講していれば、受験資格を得られます。個人向けの学習コースを用意している機関もあるため、MR未経験でも知識を身につけることが可能です。
MR認定制度では、基礎教育と実務教育の2つからなる導入教育を受けたあと、MR認定試験を受けられるようになっています。試験に合格したあと、6ヵ月間の実務経験を積むとMR認定証を得られる仕組みです。
認定証は、5年ごとに更新が必要であり、その間毎年行われる継続教育を受講する必要があります。
MR認定制度については、以下の記事で詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。
関連記事:MR認定証とは|試験の概要や難易度、勉強方法について解説
医師・歯科医師・薬剤師免許
MRは、医学・薬学の知識が必要となるため、医師・歯科医師・薬剤師免許を持っていると、仕事に活かすことが可能です。また、MR認定制度の試験を受ける際、試験科目の一部が免除されるため、資格を取りやすいメリットもあります。
ただし、最近では製薬会社の社内教育が充実しており、入社後に必要な知識を身につけられるため、大きな差にはならなくなってきています。それでもMR認定証を取りやすいという意味では、有利な資格といえるでしょう。
MRになる3つの方法
MRになる方法は、大きく分けて以下の3つです。
- 日本の製薬会社に入社・転職する
- 外資系製薬会社に入社・転職する
- CSOを活用する
保有している資格や経験によって、MRになりやすいルートは変わります。それぞれの違いを踏まえて、自分に合ったルートを選びましょう。
日本の製薬会社に入社・転職する
MRになるためのもっとも一般的な方法は、日本の製薬会社に入社・転職することです。医学・薬学の知識がなくても、入社後に教育を受けられます。ただし、新卒採用の場合、医療系の専門学校・大学で培った知識と経験が有利に働くことがあります。
未経験からMRに転職できる?
MRは、入社後に必要な知識と実務経験を身につけられるため、未経験でもMRに転職できる可能性はあります。ただし、前職の経験が活かせるかどうかは採用の際にチェックされるでしょう。例えば、営業職の経験やスキルはMRにも活かせるため、転職に有利に働くことがあります。
外資系製薬会社に入社・転職する
外資系製薬会社に入社・転職し、MRとして活躍する方法もあります。ただし、日本の製薬会社ほど、MR教育に力を入れていないため、未経験からの転職は難易度が高いでしょう。即戦力を求める外資系製薬会社でMRとして働きたい場合、日本の製薬会社でMR経験を3年以上積むのが近道となります。
最近ではCSOの派遣MRを活用する外資系製薬会社も多く、CSOでコントラクトMRになり外資系企業への派遣を目指すルートもあります。
英語力が求められる外資系企業は多くありますが、外資系製薬会社に勤めるMRにはそれほど英語力は求められません。国内の医療関係者とコミュニケーションを取ることがメインの業務となるため、英語力よりもコミュニケーション力や営業スキルが重視されます。
関連記事:外資系製薬会社に転職するためには|職種や業務内容、必要なスキルをご紹介
CSOを活用する
製薬会社からの依頼を受けてMRの派遣や業務の請負を行うCSOに所属できると、MRとして活躍できます。CSOで活躍するMRは、コントラクトMRと呼ばれています。
日本CSO協会が2022年に実施した「わが国の CSO 事業に関する実態調査」を見ると、MRの全体数は2014年から減少傾向にありますが、コントラクトMRの割合は増大傾向にあります。つまり、コントラクトMRの需要は高まっていると考えられます。
教育制度を充実させ、未経験者の採用を積極的に行っているCSOもあるため、未経験からMRを目指したい場合におすすめのルートです。
MRに求められるスキル
MRは、医療関係者に正しく医薬品の情報提供を行うため、以下のスキルを求められます。
- コミュニケーション能力
- わかりやすく説明する言語力
- 話を聞く傾聴力
- 対人サービスの知識・経験
- 勉強への意欲
これらが自分自身に備わっているか確認し、MRになるために磨きをかけましょう。
コミュニケーション能力
医療関係者と良好な関係を築くコミュニケーション能力は、MRにとって重要な能力です。日々忙しい医療関係者を気遣いながらアポを取るというように、臨機応変に対応する必要があります。職務を全うするためには、気遣いだけでなく、自らアプローチする積極性も必要です。コミュニケーションのバランスを保ちながら、医薬品の情報提供を行います。
わかりやすく説明する言語力
医薬品の情報提供の際は、わかりやすく説明する言語力も求められます。テキストの文言をそのまま読み上げるのではなく、限られた時間のなかで簡潔にまとめながらも相手に伝わる説明が必要です。そのためには、医薬品の特長や効果を十分に理解できる読解力も求められます。
話を聴く傾聴力
MRは、情報提供だけでなく、医薬品を使用した医療関係者の意見や要望を聴きます。医療関係者に心を開いてもらい、本音を引き出すためには傾聴力が必要です。医療関係者の声は、自社に持ち帰り、フィードバックして研究や開発につなげることになります。「よりよい医薬品開発に貢献したい」という気持ちがあると、親身になって耳を傾けられるでしょう。
対人サービスの知識・経験
異業種からMR経験なしで転職する場合、対人サービスや営業の知識・経験があると大いに活かせます。顧客ニーズの理解や営業アプローチは、医療関係者に対しても応用できるため、現在対人サービスに関わる仕事に就いているのであれば、MRに活かすことを意識し、スキルアップを目指してみるとよいでしょう。
勉強への意欲
MRは、自社の医薬品だけでなく他社製品や医学・薬学についての勉強が必要です。医薬品は、続々と新しい製品が出るとともに、知識や常識が更新され続けていくため、キャッチアップし続ける意欲が求められます。
まとめ
MRは、医薬品を安全かつ効果的に使ってもらうため、医療関係者に正しい情報提供を行う職種です。MRになるためには、主に以下の3つの方法があり、自分のスキルや経験に応じて適切なルートが変わります。
- 日本の製薬会社に入社・転職する
- 外資系製薬会社に入社・転職する
- CSOを活用する
未経験からMRに転職することも可能です。教育制度が充実した日本の製薬会社やCSOを目指す方法もありますが、もし、今すぐに外資系製薬会社でMRとして活躍したいという方がいましたら、ぜひエンワールド・ジャパンにご相談ください。MRとして活躍できるルートをともに考え、転職活動をサポートします。