転職時の面接では、ほとんどの企業が転職理由を尋ねます。しかし、転職理由の伝え方がわからず、マイナスな印象を与えてしまわないかと不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、転職活動を始めている方や、これから転職活動を始める方に向けて、転職理由の答え方を解説します。転職理由ごとの例文や、理由が思い浮かばない場合の対処法も紹介しているので、面接対策の参考にしてみてください。
面接官が転職理由でチェックしているポイント
転職理由を答えるにあたって、面接官が何を確認しているのかを把握することが重要です。面接官が転職理由でチェックしているポイントとして、以下の2つが挙げられます。
- 自社との相性はよいか?
- 同じ理由で退職されないか?
それぞれの項目について詳しく解説します。
自社との相性はよいか?
面接官の多くは、転職理由を聞く際に、応募者と自社との相性を確認しています。
仮に、転職理由の一つが「個人主義・成果主義の環境で、自分のペースで働きたいため」だとしましょう。その場合、チームワークが重視される企業では「うちとは相性が合わないかもしれない」という印象を、面接官に与えてしまう可能性があります。
また、どのようなモチベーションで仕事に取り組んできたかということも、転職理由から読み取ることが可能です。そのため、応募者の仕事に対する姿勢が、自社の求める人物像や社風と合致しているかどうかも重視されます。
同じ理由で退職されないか?
転職理由を聞く際には、前職と同じ理由ですぐに退職する可能性がないかもチェックしているポイントです。
多くの企業は、採用した人材が長期間活躍してくれることを期待しています。入社してから短い期間で辞められると、採用コストや教育にかけた時間が無駄になってしまいます。
そのため、転職理由が自社にも当てはまらないかどうかをはじめ、他責思考によるものはないか、内容に違和感がないかどうかも確認しています。
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転職理由で好印象を与える6つのコツ
ここでは、面接の転職理由で好印象を与えるコツを紹介します。重要なポイントは以下の6つです。
- 本心と異なる転職理由を作らない
- 人間関係の話はできる限り控える
- 応募先企業にも該当する理由は控える
- ネガティブな転職理由の裏にあるポジティブな要素を見つける
- 現状を改善するために行動したことを伝える
- 転職理由と志望動機に一貫した流れを持たせる
それぞれのコツを確認していきましょう。
本心と異なる転職理由を作らない
面接で少しでも評価されたい気持ちが強いばかりに、本心と異なる転職理由は作らないようにしてください。
なぜなら、前職や現職に不満があったことから、転職を目指している方は多くいるからです。面接官も転職希望者が不満を抱えていることは理解しているため、伝え方にさえ気をつけていれば、本当の退職理由を話しても問題ありません。
また、これまでに多くの面接を担当してきた面接官の前で、作り上げられた転職理由を伝えることで、嘘をついていることが見抜かれる場合もあるかもしれません。
本心でない転職理由を伝えて採用されたとしても、入社後に本当の転職理由に当てはまる状況が発生する可能性があります。その場合、仕事をするなかで次第に不満が募り、また退職してしまう恐れがあります。
人間関係の話はできる限り控える
人間関係の悩みはあらゆる企業で起こり得るため、転職理由として人間関係の話はなるべく控えましょう。
「上司や同僚とのコミュニケーションがうまく取れなかった」などの理由を伝えてしまうと、入社後に他の社員と協力して仕事に取り組めるのかと、不安に思われてしまう恐れがあります。
そのため、セクハラやパワハラなど、客観的にみて仕方がない理由以外の場合は、自ら人間関係の問題について話す必要はありません。
応募先企業にも該当する理由は控える
応募先企業にも該当する転職理由は、面接で伝えないほうが賢明です。転職理由として伝えた内容が転職後も解決につながらない可能性があることで、自社を選んだ理由について面接官から疑問を抱かれる場合があります。
例えば、転職理由として「転勤が多く、落ち着いて生活できなかった」と伝えると、応募先企業でさまざま事業所への転勤が考えられる場合に、入社しても早い段階で退職してしまうのではないかと懸念される可能性があります。
離職を心配されないためにも、前職や現職で抱いていた不満や改善したいところを、応募先企業で解消できるかどうかを意識したうえで、転職理由を考えることが重要です。そのためにも、入念に企業研究を行い、転職を希望する企業の社風や働き方などを十分に把握することをおすすめします。
ネガティブな転職理由の裏にあるポジティブな要素を見つける
転職理由がネガティブな内容の場合は、どのように伝えればよいのか悩む方もいるのではないでしょうか。その場合は、転職理由に隠れているポジティブな要素を見つけることが重要です。
例えば、「上司との関係性がうまくいかなかった」という理由の場合は、「上司や仲間と協力して実績をあげたい」という想いの裏返しといえます。また、「給料が安くて不満を抱いていた」という理由の裏には、「自分の力を最大限に発揮し、正しく評価されたい」というポジティブな思考が考えられます。
その他の転職理由も、以下のように前向きな理由に言い換えることが可能です。
ネガティブな転職理由 | ポジティブに言い換えた転職理由 |
仕事のやりがいがなかった | 自分らしく働ける環境で力を発揮したい |
スキルが身につかなかった | より幅広い業務を担当して、スキルアップを図りたい |
企業の将来性が不安だった | 企業の成長を実感したい |
残業が多くて大変だった | 生産性を保って、効率的に働きたい |
社風が合わなかった | チームで協力して働ける職場で実力を発揮したい |
まずは、ありのままの転職理由を書き出し、そこからポジティブな言葉に変換できないかを考えてみましょう。
現状を改善するために行動したことを伝える
面接の転職理由として、これまでの不満や愚痴ばかりを伝えていても、評価につながることはありません。職場で不満があった場合は、その現状を変えるため、どのような行動を起こしたのかを伝えることが大切です。
例えば、同じ業務ばかりを任せられ、スキルアップにつながらないことに不満を抱いていた場合は、「他の業務を担当させてもらうために上司にかけ合った」などの行動を伝えましょう。
結果的に不満が解決されなかったとしても、問題解決に向けてどのように動いたかを伝えることで、自主的に行動できる方だという印象を面接官に与えられる可能性があります。
転職理由と志望動機に一貫した流れを持たせる
面接で伝える転職理由は、志望動機と一貫した流れを持たせることが重要です。
例えば、転職理由が「決められた仕事ばかりで、工夫する余地がなかった」ことの場合、志望動機として「御社の自分自身で方法を考えながら柔軟に仕事に向き合えるところに魅力を感じました」などと伝えると、転職理由と志望動機の一貫性を示せます。
このように、理路整然と「こういう理由で退職し、それを叶えるためにこの企業で働きたい」と説明できれば、面接官も納得しやすく、評価につながる可能性が高くなります。
関連記事:面接で志望動機・志望理由を聞かれたときの効果的な答え方
ケース別の転職理由の例文
ここでは、転職理由の回答として、具体的な例文を以下の6つの場合に分けて紹介します。
- スキルアップ・キャリアアップを目指したい
- キャリアチェンジをして新しいことに挑戦したい
- ワークライフバランスを改善したい
- 給料を上げたい
- 会社の将来性に不安がある
- 介護や家族の転勤など家庭の事情がある
回答のポイントについても解説しているので、転職理由を考える際の参考にしてください。
スキルアップ・キャリアアップを目指したい
【例文】
現在の職場では、営業職として8年間勤務しており、顧客満足度の向上や商圏拡大を目的とした社内プロジェクトなどを経験してまいりました。その際、日本ならではの文化や商習慣に触れることで、営業職としてのスキルや経験を高めることができたと感じています。
今後は、さらに視野を広げるべくグローバルな環境の下で、自身の営業力をさらに高めていきたいと考えておりますが、現在の企業規模ではその実現が困難であると実感しており、転職を決意しました。
【回答のポイント】
転職後に習得したいスキルを示す前に、これまでの仕事の経験や身につけてきたスキルを伝えましょう。そこから、入社後の取り組みたいことを述べることで、面接官に自社で活躍するイメージを持ってもらいやすくなります。
また、これから身につけたいスキルが、応募先企業の仕事を通して習得できることであるかを、確認しておくことが重要です。
関連記事:転職でキャリアアップするのは難しい?できる人の考え方を詳しく紹介
キャリアチェンジをして新しいことに挑戦したい
【例文】
営業職として5年の経験があり、お客さまの声を直に聞いてきました。しかし、営業の業務だけでは、お客さまのニーズや課題に応えることはできないと感じるようになりました。
前職で商品開発部への異動願いを提出したり、商品改善の提案をしたりしましたが、組織において、他部署間異動の前例がなかなかないことから実現が困難です。
商品開発は未経験ですが、営業経験で培った顧客ニーズのくみ取り力を活かし、常に新しい商品を生み出している御社で、お客さまのための商品開発に邁進したいと考えています。
【回答のポイント】
異なる職種で働くことを希望している場合は、前職でその望みを叶えられなかったことを伝えることが大切です。「部署異動を願い出たものの実現しなかった」と伝えることで、辞めた理由に面接官が納得しやすくなります。
今まで経験してきたことのない業種や職種で採用されるには、経験のある仕事を希望する場合よりも難易度が上がります。そのため、これまでの経験やスキルを、転職先で活かせるとアピールすることが重要です。
ワークライフバランスを改善したい
【例文】
現在の職場では、毎月100時間以上の残業が続いており、プライベートの時間を確保しづらい状況が常態化しております。業務に対して人員が足りておらず、補充される目処が立っていないこともあり、今後も残業時間が減少する見込みはありません。
結婚して子どもが生まれたこともあり、仕事だけでなく家庭との時間を大切にしたいため、今の働き方を続けることは難しくなりました。そのため、現在のワークライフバランスを改善したいと考え、転職を決意いたしました。
【回答のポイント】
ただ残業を減らしたいという理由では、労働意欲が低く感じられ、面接官にネガティブな印象を与える可能性があります。実際の残業時間や、勤務時間など具体的な数字を伝え、労働時間の長さについて明確に伝えることが重要です。
さらに、自身の努力だけでは残業時間を減らすことが困難であると主張することで、転職の必要性について説得力が増します。
また、「何となく残業を減らしたいだけなのでは」と思われないために、「家族や子どもとの時間を増やしたい」など、ワークライフバランスを改善したい理由について伝えてみましょう。
関連記事:子育てしながらの転職を成功させるには?注目すべきポイントや適したタイミングを知ろう
給料を上げたい
【例文】
現職では、実績よりも勤続年数が評価されています。現在、入社5年目で毎期の売上目標を達成していますが、入社時からほとんど給与額は増えておりません。
昨年、結婚したこともあり、今後子どもができることを考えると、家族を支えるために今の会社で働き続けることは難しいと思われます。そのため、個人の成果で評価される会社で働きたいと考え、転職を決意いたしました。
【回答のポイント】
現在の会社で給与の増える見込みがないことを示すため、成果を出しても、収入が増えない状況を伝えることが大事です。
また、「家族を支える」「親の支援をする」など、収入を増やしたい理由を付け加えることで、転職の必要性が伝わりやすくなります。その後、実力や成果で評価される会社で働きたい意志を示すことで、前向きな印象を与えられます。
会社の将来性に不安がある
【例文】
現職では業績悪化により、事業所の閉鎖や採用人数の減少などの影響が出ており、事業も縮小傾向にあります。私自身も新規事業のリーダーとして仕事を進めておりましたが、予算の確保が難しいために、事業は志半ばで終了しました。
業界も縮小傾向にあり、会社の業績が改善される見込みもないため、今後も仕事の幅が狭まることが予想されます。これからのキャリアを考えたときに、新たな仕事に挑戦してスキルアップしたい気持ちが強いため、転職をする考えに至りました。
【回答のポイント】
業績不振により、自身が担当する仕事にまで影響が出ていることを伝えます。また、業界の需要や会社の現状などから、業績が良化する見込みがないことを示すことで、転職が必要であることを強調できます。
不安ばかりでなく、「新しい仕事に挑戦したい」「スキルや経験をさらに充実させたい」など、仕事に前向きに取り組む気持ちがあることも伝えましょう。
介護や家族の転勤など家庭の事情がある
【例文】
父が病気のため介護が必要となり、実家に戻らなければならなかったことが退職のきっかけです。
前職は、実家から通勤できる範囲に事業所がなく、リモートワークにも対応しておりませんでした。そのため、父の状態が良くなるまでは、一緒に住みながら介護に専念したいと考え、退職いたしました。
現在は、父が介護施設に入所したため、介護で仕事に影響が出る可能性はありません。前職での仕事の経験やスキルを活かし、御社に貢献する所存です。
【回答のポイント】
介護や家族の転勤にともなう時間や場所の制限などで、これまでの会社で働くことが困難になり、退職せざるを得なかったことを伝えましょう。
また、介護を理由に退職した場合は、介護施設に入所していることや、自分以外にも兄弟や親戚のサポートがあることなどを示せれば、仕事に専念できることのアピールにつながります。
現在も家庭の事情によって仕事に影響が出る場合は、入社後に働きやすくするためにも、包み隠さずに伝えておきましょう。
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面接の転職理由が思いつかないときの対処法
面接で伝える転職理由が思い浮かばない場合は、紙に書き出して情報を整理することが効果的です。具体的には、以下の3つの項目に分けて考えます。
- 退職のきっかけ
- 改善するために起こした行動
- 志望先企業で実現できること
まずは、退職を考えたきっかけを箇条書きで書き出しましょう。その後、それぞれの転職理由ごとに、状況を変えるためにとった行動を記入します。
例えば、残業時間が長いことが転職理由であった場合は、「業務を効率化するためにマニュアルを作成した」「人員不足を解消するために、上司に働きかけた」などの行動を具体的に書きます。
最後に、転職を考えている企業で、前職・現職では改善されなかった問題を解決できるかどうかを検討してください。「残業時間がほとんどなく、理想のワークライフバランスを実現できる」「人事評価制度が整備されており、個人の成果で適切に評価される」など、志望先企業で叶えられることを記入します。
このように、項目を分けて紙に書き出すことで、頭のなかの情報が整理され、説得力のある転職理由を考えやすくなります。
また、転職エージェントに相談してみることも、転職理由を考える方法の一つです。一人で考え込まずに、転職のプロに話してみることで、転職理由が明確になる可能性が高まります。
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外資系企業への転職理由を考える際の注意点
外資系企業に転職する場合は、転職理由を考える際に外資系企業ならではの気をつけるべきことがあります。主な注意点は以下の3つです。
- 社風の理解を怠らない
- 即戦力として活躍できるアピールを忘れない
- 「英語を使いたい」以外の理由も考える
外資系企業への転職を目指す際の参考にしてください。
社風の理解を怠らない
「外資系企業は個人主義」という印象を持ち、「チームで協力して仕事に取り組みたい」という転職理由は、評価されないのではないかと考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、外資系企業だからといって、何事も単独で成し遂げるわけではありません。企業によって社風や働き方は異なるため、応募を検討している企業ごとの特徴を十分に調べることをおすすめします。
ホームページや求人ページには、「Mission」や「Core Values」といった言葉を用いて、企業が大切にしている文化や社風が記載されています。その内容を読み込み、企業ごとの特徴を理解したうえで、転職理由を考えるようにしましょう。
即戦力として活躍できるアピールを忘れない
日本企業に比べて外資系企業は、職務内容に適した人材を採用する「ジョブ型雇用」を取り入れていることが一般的です。そのため、ある程度専門的なスキルや経験を求められることが多く、即戦力として活躍できるというアピールは重要だといえます。
すでに、希望する業界・職種でのキャリアを積んでいる方は、これまでに習得したスキルや経験した仕事について伝えましょう。また、数年後のキャリアプランや、国内外の動向を踏まえた業界の未来について話すことで、好感触を得られる可能性があります。
関連記事:ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違いや導入企業の事例を解説
「英語を使いたい」以外の理由も考える
得意の英語を活かして、外資系企業への転職を目指す方もいるでしょう。しかし、「英語を使いたい」だけでは転職理由としては不十分であり、それ以外の理由も考えることが重要です。
語学の堪能な人材を必要とする外資系企業は多いですが、英語はあくまでも手段であり、それだけで人材としての価値が決まるわけではありません。キャリアプランを明確にし、自身がその企業で何がしたいかという観点で転職理由を述べることが大切です。
企業によっては、外資系企業でも英語を使わないポジションがあります。そのため、応募する部署や職種で必要とされるスキルを事前に確認することも重要です。
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まとめ
面接で転職理由を答える際は、これまでの会社の不満を述べるだけでなく、改善するために起こした行動を伝えることが重要です。できる限りのことはしたけれども、問題点が解消されなかったことを示すことで、転職理由に説得力が増します。
また、採用担当者に「同じ理由で退職するのでないか」という不安を抱かせないために、応募先企業にも該当する可能性のある転職理由は控えましょう。
転職理由を考えることに苦戦している場合は、転職エージェントの活用をおすすめします。
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