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薬機法管理者という資格が気になるものの、「具体的にどんな場面で役立つのか」「取得すると転職で本当に有利になるのか」と疑問を抱く方は少なくありません。美容・健康・医薬品分野は法規制が厳しく、広告表現ひとつが企業の信頼を左右するため、薬機法への深い理解は専門性として高く評価されています。しかし、国家資格ではない民間資格である点や、薬剤師・コスメ薬機法管理者との違いなど、意外と曖昧なまま判断に迷う方も多いのではないでしょうか。
本記事では資格の概要、取得ステップ、難易度、活かせる職種、取得後のキャリアパスまで体系的にまとめています。薬機法管理者を「キャリアの武器」にできるかを冷静に判断できる内容です。この記事を読むことで選択の後悔を避け、自信を持って次のキャリアへ踏み出していただけるはずです。
薬機法管理者とは?
以前は「薬事法管理者」と呼ばれていましたが、2014年の法改正の影響を受け、薬事法管理者は現在では「薬機法管理者」と名称が改められています。
呼び名が変わっただけで、いずれも薬機法の専門知識を持つことを対外的に証明できる同一の資格であり、また資格保有者のことを指します。
まずは薬機法管理者への理解を深めるために、この資格の概要を深堀りしていきましょう。
薬機法管理者(旧:薬事法管理者)は法規制チェックの専門家
そもそも薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称です。薬機法管理者は、この法律に関する知識を体系的に理解していると認定された、薬機法のスペシャリストのような人材といえます。
薬機法は、企業や医療機関が医薬品や化粧品などを開発・製造・販売・広告する際の、製品の品質や安全性を担保するために設けられている法律です。万が一薬機法に違反していることが発覚した場合、行政処分や社会的信用の失墜などの大きなリスクをともないます。
特に以下のような業界・機関は、薬機法の影響度が高いといえるでしょう。
- 製薬業界
- 医療機器業界
- 医薬部外品業界
- 化粧品業界
- 広告・マーケティング業界
- 医療機関
これらの現場では、製品開発から販売活動、自社のPRに至るまで、さまざまな業務において薬機法を遵守した運用が求められます。薬機法管理者の資格を取得することで、これらの業務に潜む法的リスクを正しく判断し、企業活動の透明性を支える役割を担えるようになります。
参照:デジタル庁|e-Gov「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)」
薬機法管理者は国家資格ではない
薬機法管理者は国家資格ではなく、薬事法ドットコムが主催する民間資格です。そのため、医師や薬剤師などのように、資格がないと従事できない独占業務はありません。
しかし、薬機法管理者は薬機法に関する正しい知識を保有していることを示す1つの指標として、ヘルスケア関連企業から一定の評価を得ている資格です。
そのため、薬機法を扱う業界への転職を目指す場合、たとえ未経験であっても薬機法管理者を取得しておくことによって、自身の市場価値が高まる効果が期待できます。
参照:株式会社薬事法ドットコム
薬機法管理者と混同されやすい資格
薬機法管理者と混同されやすい資格として、「コスメ薬機法管理者」や「薬剤師」などが挙げられます。
それぞれの違いを正しく理解するために、ここでは各資格の詳細を解説します。
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薬機法管理者 |
コスメ薬機法管理者 |
薬剤師 |
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種類 |
民間資格 |
民間資格 |
国家資格 |
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役割 |
薬機法全般に基づき、製品や業務の品質や安全性、有効性を確保する |
薬機法の中でも化粧品分野に特化し、製品やサービスの法令遵守と安全性を確保する |
医薬品の適正な使用を指導し、服薬管理を通じて患者の健康と安全を支える |
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業務内容 |
● 医薬品、化粧品、医療器具などの表示や広告内容のチェック ● 製品の開発・販売プロセスにおける法規制遵守のサポートなど |
● 化粧品の表示・広告表現の薬機法チェック ● 化粧品の成分・処方に関する規制適合の確認など |
● 処方箋に基づく調剤と医薬品の適正な提供 ● 患者への服薬指導や副作用に関する説明 ● 医薬品の在庫・品質管理など |
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勤務場所 |
製薬・医療機器メーカー、化粧品会社など |
化粧品会社や製薬メーカーなど |
薬局、病院、クリニックなど |
コスメ薬機法管理者との違い
薬機法を体系的に学ぶ必要がある薬機法管理者に対し、コスメ薬機法管理者は薬機法の中でも化粧品に関連する分野のみに特化した資格です。
そのため、両者は習得できる薬機法の知識や、資格取得までにかかる勉強量にも差が生じます。ただし、資格の優劣があるわけではなく、美容や化粧品に特化した企業で働く場合は、コスメ薬機法管理者としての知識を業務で活かせる機会は多々あります。
自身がどのような目的で薬機法の知識を深めたいかを明確にしておくことで、薬機法管理者とコスメ薬機法管理者のどちらを取得すべきかを判断しやすくなるでしょう。
薬剤師との違い
薬機法管理者が民間資格であるのに対し、薬剤師は国の法律に基づいて制定されている国家資格です。
薬剤師は医師の処方箋に基づいて医薬品を調剤し、患者へ提供するとともに、服薬指導や健康相談を行うことが主な業務です。このほか、医薬品における治療効果と安全性を高めるために、患者を適切にサポートする役割なども担います。
また、薬機法管理者はヘルスケア関連企業の法務やマーケティング部門で活躍することが多いですが、薬剤師の主な勤務場所は薬局や病院、クリニックなどの医療現場です。
このように、薬機法管理者と薬剤師は、資格の種類や目的、業務内容や勤務場所などにおいて明確な違いがあります。
薬機法管理者を取得するための流れ
薬機法管理者を取得するための流れを、5つのステップに分けて解説します。
STEP1:薬事法ドットコム主催の講習を受ける
薬機法管理者の資格試験を受けるには、薬事法ドットコムが主催するeラーニング講座を受講する必要があります。
アカウントを作成して講座を申し込み、受講料を支払うと講座を受講できます。受講期限は入金から1年間です。
受講を完了すると、次の修了試験へ進みます。
STEP2:修了試験に合格する
講座受講後に身分証明書の提出手続きを行うと、修了試験を受けられます。修了試験の解答時間は60分間です。
修了試験の採点には数日間かかる場合があります。修了試験に合格すると修了証が発行され、本試験である資格試験の受験資格を得られます。
不合格の場合は、任意の追試試験を受けることも可能です。
STEP3:資格試験に合格する
修了試験に合格し、本資格の受験費用を支払うと(※)、自身のアカウントページに「管理者資格試験」というチャプターが表示されるようになります。このページからいつでも資格試験に挑めます。
資格試験の採点も修了試験と同様に数日かかる場合があり、合否連絡はメールでの通知です。
資格試験に合格した日から資格者となり、資格の有効期限は1年間です。
(※)講座申し込み時に資格試験をセット購入していた場合は、再度の振り込みは不要
STEP4:登録講習動画を視聴し、チェックテストを受ける
資格試験の合格者は、薬機法管理者の登録を行うための動画視聴ページを閲覧する必要があります。
登録講習動画を視聴したあと、合否判定なしのチェックテストを受けることで、正式に薬機法管理者として登録されます。
STEP5:認定証が発行される
ここまでの流れを終えると、希望者のみにカード型の認定証が発行されます。
認定証の発行を希望する場合は、資格試験を受講する前に指定サイズの証明写真を提出しておく必要があるため、注意しましょう。
資格は1年ごとに更新が必要で、更新費用を振り込んだあと、登録動画視聴とチェックテスト(STEP4)を再度受けることで手続きが完了します。
薬機法管理者の難易度や合格率は?
薬機法管理者の合格率は正式には発表されていませんが、難易度は決して高くないと想定されます。
試験を主催している薬事法ドットコムによると、講座を受講してから3ヵ月〜6ヵ月程度で資格を取得する方が多いようです。
もともとの知識量や、どの程度学習時間を設けるかによっても差が生じますが、最短3ヵ月で資格を取得できる可能性があるのであれば、短期集中型の学習でも合格できる可能性はあるといえるでしょう。
ただし、薬機法という専門性の高い分野を学ぶ必要があるので、まったくの未経験者の場合は、計画的に学習に取り組むことをおすすめします。
薬機法管理者を活かせる仕事
薬機法管理者の資格を活かせる主な仕事を3つ紹介します。
化粧品・健康食品・医療品分野の品質管理
薬機法管理者の知識は、化粧品や健康食品、医薬品や医療機器などを扱う企業の法規制部門や品質管理部門などで活かすことができます。
これらの企業では常に薬機法に基づいた製品開発やサービス提供が求められるため、薬機法管理者の視点から法的リスクを精査することで、企業のコンプライアンス維持に貢献できるでしょう。
美容・健康関連の広告マーケティング
美容や健康関連の広告マーケティングの仕事でも、薬機法管理者の知識が大いに役立ちます。
薬機法管理者を取得することで、薬機法だけでなく、景品表示法(景表法)の観点からも企業のLPや広告表現をチェックできるようになるためです。
法規制に精通した薬機法管理者であれば、企業が存続・発展するうえで欠かせない広告表示を正しく精査し、企業の法令遵守をサポートできるようになります。
ライター・編集者
薬機法管理者としての知識は、ライターや編集者の仕事にも活用できます。
薬機法に関する記事は専門性が高く、法規制の内容を正確に理解し、情報を精査しなければ公にできません。そのため、薬機法管理者の資格を有するライターや編集者は、各社から重宝される傾向にあります。
特にフリーランスとして仕事をしている場合は、資格の有無が案件の獲得数や記事単価にも影響を及ぼす可能性が高いです。
薬機法管理者取得後のキャリアパス
薬機法管理者の資格取得は、将来の効率的なキャリアアップにもつながります。
前述のように薬機法管理者を活かせる仕事は多々あるため、有資格者としての知識を活かして企業の品質管理部門やマーケティング部門などで経験を積めば、スムーズなキャリア構築を図れるでしょう。
将来的にさらに専門性を高めたい場合は、薬事コンサルタントや薬事アドバイザーとして活躍することで、より市場価値の高い人材として企業に貢献できます。
このように一定のキャリアを積んでおくことで、年収アップを目指して転職活動を図る際も、高年収が狙いやすい外資系医薬品・化粧品メーカーや、外資系美容企業への転職を実現しやすくなるでしょう。
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薬機法管理者は、薬機法に関する正しい知識を有するスペシャリストであることを客観的に証明できる資格です。特にヘルスケア関連企業は薬機法を遵守して日々の企業活動を行っているため、薬機法管理者の有資格者を重宝する傾向にあります。
薬機法管理者の知識を活かして専門性の高いキャリアを積むことで、将来的に外資系医薬品・化粧品メーカーや外資系美容企業へ転職して、効率的に年収アップを図ることもできるでしょう。
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執筆者: エンワールド編集部
外資系・日系グローバル企業のハイクラスに精通するエンワールドの編集部員が、転職やキャリア、日々の仕事のお悩みに役立つ情報を執筆します。