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この「入社後活躍」ブログシリーズも第11回目となり、毎月お読みいただいている方々は、転職して約1年を迎える頃だと思います。この1年間の成功や失敗を振り返る機会は作りましたか?
今回は、仕事で活躍しキャリアを築いて行くための振り返り、特に「1年間の振り返りの重要性」について、お伝えします。転職の有無に関わらず、キャリア形成のtipsとして本ブログをお読みいただいている方には、年度ごとの振り返りとして考えていただければと思います。
振り返りの重要性
皆さんは、定期的かつ継続的に、仕事や自身の行動の振り返りを実施していますか?
最近転職をされた方は、転職活動をする際にこれまでの経歴、経験、結果などを職務経歴書(Resume)に整理されているので、少なくともその時点での振り返りは実施されていると思います。
振り返りは転職の有無に関わらず、定期的に実施することが重要です。
トップレベルのビジネスパーソンとしてあり続ける為に、経営学者であるピーター・F・ドラッカーはその著書の中で「定期的に自らを振り返り、次に向けた改善点を洗い出す」ことが必要と記しています。
参考: P・F・ドラッカー,『プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか』ダイヤモンド社, 上田 惇生訳, 2000
ドラッカーの言葉にあるように、キャリアを築き成功し続けるためには定期的な振り返りが必要不可欠です。 振り返りを行わずに同じことを繰り返していては、成長はあまり期待できません。また、仕事への意義も見出しにくくなるでしょう。
振り返りは何か失敗した時だけに行うものではなく、成功している時にも実施するものです。
• 定めた目標や求める結果を達成しなかった場合、なぜ計画通りに進まなかったのか原因を探り出す(失敗体験)
• 定めた目標や求める結果を達成することができた場合、なぜ計画を超える結果が出せたのかを考える(成功体験)
振り返りは、自らの決断や行動がどのような結果に結びついたのかを見つめ直し、原因や要因を見つけ出したうえで次に生かしていく未来志向の行動です。人は成功よりも失敗から学ぶ傾向があるので、振り返りの過程で後悔や自責の念に駆られて落ち込んでしまう事もあるでしょう。しかし、そのせいで先へ進めなくなっては元も子もありません。 失敗も成功も、あらゆる体験は次に訪れるチャンスを掴む為に必要だったものと考えるようにしましょう。
経験を体系化し、改善につなげる方法
振り返りの必要性と重要性について理解していただいたところで、次のステップに進みます。
自身の体験をどのように体系立てて考えれば、再現性があるものへと繋げていく事が出来るのでしょうか。
皆さんは「経験学習モデル」について聞いたことがありますか? 経験学習の理論の考案者であるデイヴィッド・コルブが提唱する、経験を活かした学習モデルです。
引用:デイヴィッド・コルブ,『最強の経験学習』, 中野 眞由美訳, 辰巳出版, 2018
経験を通して気付き、様々な視点で振り返りながら省察し、持論あるいは教訓として応用できるように概念化し、新しい場面でそれを施行する、という4つのポイントで学習サイクルが成り立っています。
このサイクルに則って考えると、失敗や成功などのあらゆる体験を改善に繋げていくことが出来ます。
経験学習モデル以外にも、良く知られている様々なフレームワークが存在しています。例えば、PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)、YWT(Y:やったこと、W:分かったこと、T:次にやること)、KPT(Keep:継続していくこと、Problem:問題点、Try:今後実践すること)などです。
振り返りのフレームワークは、自分に合ったものを探して使っていくのが良いと思いますので、ここに挙げたものに固執する必要はありません。
一番重要なのは、実践することと継続することです。
振り返りは、一度実施するだけでは大きな収穫が得られません。また、継続しなければ元の状態に戻ってしまうのは必至です。
少なくとも1年に1回は必ず振り返ることをお勧めしますが、可能であれば、振り返りの習慣を身に着けるために、デイリーで出来る事から実践してみることをお勧めします。そして、継続を通して、新しい自分に向き合う機会と、次に訪れるチャンスをつかむことが出来るよう準備をしていただければと思います。
活躍し続けるための目標設定
皆さんは、働く上での目標を立てていますか?
ここで言っているのは、仕事における会社からの期待値や、KPI(重要業績評価指標)・KGI(重要目標達成指標)などの、営業の売り上げ数字のようなものではありません。
例えば、私は営業部門の責任者なので、部門全体の売り上げ数字が会社からの期待値であり、仕事での達成目標としてありますが、これは私自身が働く上での最終的なゴールとは異なります。
では働く上での目標とは何でしょうか?
簡潔に言えば、「なぜその仕事をするのか」の答えとなるものです。
「目の前の仕事にがむしゃらに取り組んでおり、そんな目標は必要ない」、「とりあえず言われたことをやっていれば何も問題は起きない」という意見もあるかもしれません。
確かにそれでも一定の結果は生まれると思います。しかし、「なぜ行っているのか」という強い動機が無い行動は、非常にもろく崩れやすくなります。 何かの拍子に調子が悪くなる、思うように結果がついてこなくなる、そして、壁やチャレンジにぶつかると途端に行動が止まり、前に進めなくなったりします。
その結果、会社から期待されている事が出来なくなり、仕事を続けるためのモチベーションが下がり、最終的に仕事を辞めたいと思うようになる場合もあります。
この様な時に、「なぜその仕事を行うのか、結果の先に自分は何を求めているのか」が明確であれば、少し立ち止まったり落ち込んだりしても、また前に進むことが出来るようになります。
これが、働く上での目標を持つ人と持たない人の行動と結果を大きくわけるポイントです。
新しい会社で2年目に入るみなさんには、今後さらに活躍し、そのパフォーマンスを継続できるようになるために、是非この「働く上での目標」を考え、設定していただきたいと思います。
達成したときの情景を描けるほど、具体的な目標を考える
今この瞬間に「〇〇さんの目標は何ですか?なぜこの仕事をしているのですか?なぜその結果を追い求めるのですか?」と聞かれたら、皆さんはスムーズに回答できるでしょうか?
もし答えに詰まってしまうなら、自分の目標は何か、自分が何を求めているのか、なぜそれを目標にしているのか、ぜひ改めて考えてみてください。
初めてこの目標設定を行う場合、非常に時間が掛かります。しかし、一度取り組めば、自分は何のために今の仕事をしていて、なぜその結果を求めているのかが明確になり、スッキリした気持ちで働くことが出来るようになります。
仮に、「年収を上げたい」が目標の場合、どれくらいの年収にしたいのか、いつまでに達成したいのか、なぜその年収額なのか、その年収を得ている自分のイメージ、その結果どの様な感情が湧き起っているのか、というところまで答えられるようにしておくのがベストです。
お金を目標にするのは良くないという考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、「なぜお金を稼ぎたいのか」という問いにしっかりと答える事が出来るのであれば、働く上での目標として全く問題ないと考えています。
「なぜ」という問いに答えられない場合、最終的な目標と自分の動機が密に関わっていないということになります。もう一度自分自身に問いかけ、自分の目標は何なのか、なぜなのか、をより深く追及してみる事をお勧めします。
目標が決まったらやるべきこと
人は、強く思い描くこと、クリアにイメージできる事柄、常に念じている目標を具現化する力を持っています。
これにはRAS(Reticular Activating System)という脳の一部である網様体賦活系が関係していますが、簡単いうと脳の検索エンジンの様なものです。検索された内容に沿って、脳が必要な情報をせっせと取り入れていき、不必要な情報は排除していく機能です。
この検索対象となるのが、自身で設定した目標です。脳は目標に関して必要と思われる情報を蓄積し、その達成に向けて無意識のうちに動こうとします。
参考:The University of Minnesota,「 RAS (Reticular Activating System)」, https://extension.umn.edu/two-you-video-series/ras
色々な人が提唱しているので聞いたことのある話だと思います。
このRASの機能をフル活用するには、達成可能な目標であると強く信じ、毎日思い返すことが効果的です。手帳に書き留める、付箋に書いて冷蔵庫に貼っておく、パソコンのメモ帳に入れておく、など方法は自由ですが、一日一回必ず確認して目標に到達する意識を持つことで、身体が無意識のうちに定めたゴールに向かって動き出してくれます。
1年を目前にした今、しっかりと振り返りを行い、着実に目標を達成できるように動いて行けるとより良いキャリアに繋がるかと思います。
■第十回:「コーチの重要性と選び方」はこちら
■第十二回:「長期的なキャリア構築のための4つのポイント」はこちら