2015年にGoogleが「チームのパフォーマンスを向上させるためには心理的安全性を高めることだ」と発表して以降、注目を集め続けている「心理的安全性」とは何か、そのメリット、高めるための注意点についてFAQ形式で解説します。
|Q. 心理的安全性とは
「心理的安全性(psychological safety)」とは、組織やチームの中で他人の反応を恐れたり恥ずかしいと思うことなく、自分の思いや感じたことを安心して素直に発言できる状態のことです。
最初に提唱したのは、ハーバード大学で組織行動学を研究するエドモンドソン教授で、この概念を「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。
|Q. 人事担当が抑えておくべき心理的安全性の意義
心理的安全性はあくまで、誰にどのような発言をしても罰せられず人間関係も悪化しない「雰囲気」のことをいい、チームが単に仲の良い状態や団結して仕事に打ち込むことができる雰囲気とは少し異なります。
また、それは「暗黙の了解」でルールがあるわけではありません。
|Q. 心理的安全性が低い場合の具体的なシチュエーション例は?
エドモンドソン教授による、心理的安全性が低い職場に現れる具体的な例を紹介します。
- 無知だと思われる不安から、必要な質問ができなくなり職場でのコミュニケーションが減少していく。また、ミスを報告しなかったり失敗を認めなかったりするようになる。
- 自分の発言が議論の邪魔になるのではという不安から、提案や発言をしなくなり、新たな案やイノベーションが生まれにくくなる。
- ネガティブな発言をする人だと思われるのではという不安から、自分の意見を押さえつけたり、重要な指摘をしなくなったりする。
|Q. 心理的安全性が確保されるメリットは?
主なメリットとなりうる事柄を紹介します。
従業員側
- 気軽に質問でき、コミュニケーションが活発になる。
- ミスをしてしまった時も取り繕わず向き合うことができ、失敗を経験として活かせる。
- 自分の意見が尊重されるという意識から主体的に議論に参加でき、さまざまなアイディアが出し合える。
組織側
- チームが落ち着いて楽しく働けるようになり、生産性が高まる。
- メンバーを挑発してしまうような厳しい意見も言えるので、イノベーションや革新的な改善が生まれる。
- 質の高いエンプロイー・エクスペリエンス(従業員が入社から引退するまで会社で体験すること)が提供できる。
|Q. 心理的安全性が低い企業の特徴は?
個人の消費の仕方や働く意義が変化し多様化しているのにもかかわらず、例えばトップダウン型の上から命令されるだけなどのマネジメントをおこなっており、あらゆる変化に対する意識が低い傾向にあります。社員が上司の顔色をみて発言をためらい、言われたことしかしないなどの特徴もみられます。
|Q. 心理的安全性の測り方は?
エドモンソン教授は、従業員側の視点から測る方法とチームリーダーの視点から測る方法の2つを提唱しています。
前者は、チームやチームメンバーに対する以下7つの質問にイエス・ノーで答えるもので、1・3・5は「No」、2・4・6・7は「Yes」であるほどポジティブな回答と判断することができ、心理的安全性が高いと言えます。
引用:https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/foster-psychological-safety/ |
後者は、定義された以下3つのサインがチームの雰囲気やメンバーの言葉に現れているかどうかをチームリーダーが測る方法です。
サイン1:チームメンバーが次のような言葉を口にする。 「私たちはみな互いに尊敬し合っている」 「誰かがあることを気掛かりに思うと、みんなでそれに取り組むことができる」 「グループの誰もが、プロジェクトに対して責任を持っている」 「職場で仮面をかぶる必要がない。ありのままの自分でいられる」 サイン2:メンバーが、成功だけでなく、失敗や問題についても話をする。 サイン3:職場が笑いとユーモアを促しているように思われる。 |
|Q. 心理的安全性を高めるには?
「書籍:世界最高のチーム」では3つの方法を紹介しています。
- マネージャーがカウンセラーのような役割を果たし、仕事やプライベートの悩みを1on1ミーティングで聞く時間を作る。
- 経営が設定する大きなミッションに、各メンバーのゴールがどのように繋がっているか、それを達成するためにどのような意味があるのかを確認し、正しい自発性を高める。
- 雑談も含め、良質なコミュニケーション・会話を積み重ねる。
|Q. 心理的安全性を高める際の注意点
特に注意したい3つのポイントを紹介します。
- チーム仲が良好なのは良いことですが、上下関係を無視したり常識を忘れたりして馴れ合いの関係にならないよう気をつけましょう。
- 心理的安全性が高い職場は心が安らぐメリットがありますが、楽ができる職場だと適当な仕事をしてしまうメンバーが出ないよう、適度な緊張感を保つ工夫をしましょう。
- チームの雰囲気が良くなってきたと感じても、遠慮しているメンバーがいるかもしれません。全員がポジティブな感情を持てているかを確認しながら進めましょう。
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