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大企業では労働組合が組織されていることが多いため、労使協定を締結する際は経営者と労働組合が行います。しかし、日本において全企業のうち9割以上を占めている中小企業には、労働組合がない場合が多く、従業員代表制を用いて労使協定を締結する必要があります。
この記事では、従業員代表制とは何かやその主な役割、さらに、従業員代表制の導入における人事の役割についてFAQ形式で解説します。
従業員代表制とは?
労働基準法には、使用者と労働者の間で労使協定の締結を行うことを定めているものがあり、「変形労働時間制」、「フレックスタイム制」、「時間外労働・休日労働(36協定)」「年次有給休暇の計画的付与」などが該当します。
この際、企業に従業員の過半数で組織される労働組合(過半数組合)がない場合、従業員の過半数を代表する者(過半数代表)を選出し、協定を締結することが労働基準法で定められています。
また、就業規則の作成・変更する際も、過半数代表者の意見を求めなければなりません。これを「従業員代表制」といいます。
従業員代表の主な役割は?
従業員代表は、次のような役割を果たすことで、従業員の過半数の意思を反映した働き方の実現や労働環境の改善を目指します。
労使協定の締結
労使協定の内容について企業側と協議し、変更の必要があれば提言をします。最終的に協定を締結するかどうかを決定する権限も持っています。
就業規則についての意見書作成
賃金や労働時間などをまとめた就業規則について、従業員側にとって不利益な規則でないかを確認し意見書を作成するのも役割のひとつです。企業は就業規則を労働基準監督署へ届け出る際に、この意見書を添付する必要があります。
安全委員会・衛生委員会への委員(メンバー)推薦
一定の基準を満たす事業所においては、安全委員会と衛生委員会を設置する必要があります。
従業員代表は、それぞれの委員会に統括管理者以外の委員を推薦する役割もあります。
従業員代表制の導入における人事の役割
ここでは、従業員代表制を導入する際の人事の役割を解説します。
法令や規則に沿った環境整備
人事担当者は、労働組合法や労働基準法などの関連法令や企業規則に従い、従業員代表制の導入に必要な環境を整える役割を担います。
具体的には、法令や規則に基づいた手続きや書類作成、従業員への説明や周知、従業員代表者の選任方法の検討などの業務を行います。それらの業務を正確かつ迅速に行うことで、従業員代表制のスムーズな導入を目指しましょう。
従業員の理解を深めるための説明会や研修の実施
従業員に従業員代表制の目的やメリット、役割を理解してもらうことも重要です。
従業員代表制を導入することで、従業員は企業の運営に参加することができるようになり、自分たちの意見や要望を反映した働き方の実現や労働環境の改善が目指せます。
従業員の従業員代表性に対する正しい理解を深めるためにも、従業員に向けた説明会や研修を繰り返し実施するようにしましょう。
また、従業員代表制が正しく機能するよう、選挙方法についてもわかりやすく説明することが必要です。
従業員代表者選挙の実施
従業員代表者の選挙の手続きの準備や実施に関わる業務も人事担当者の役割です。
具体的には、関連法令や企業規則に基づいた選挙の日程や投票方法、選挙人の資格などの要件定義、透明性かつ公正性のある選挙ルールの設定、選挙の告知や周知の実施が挙げられます。併せて、従業員に対して選挙参加の重要性を伝えることも重要です。
また、選挙期間中に従業員が自由に参加できるよう投票時間を設定したり、投票箱のセキュリティ確保、投票箱の開封と票の集計、その後の選挙結果の公表や当選者への通知も人事担当者が行います。
従業員代表者と企業側との調整
従業員代表者が行う労働条件や労働環境の改善に関する要望や提案に対して、企業として受け入れられる範囲で措置を行うのも人事担当者です。
具体的には、従業員代表者が定期的に開催する会議や意見交換会などに参加し、従業員代表者との意思疎通を行い円滑なコミュニケーションを図りながら、従業員の要望や意見を企業内に反映させることが求められます。
今回は従業員代表制について解説しました。エンワールドは、企業のグローバル人材に関する採用課題をあらゆる方面からサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。