CSRとは?社会貢献やコンプライアンスとの違い、7つの原則を簡単に解説

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CSRとは?社会貢献やコンプライアンスとの違い、7つの原則を簡単に解説

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業の社会的責任を指す概念です。社会の変化や企業への期待の高まりとともに、企業は利益を追求するだけでなく、社会の一員としての責任を果たすことが求められるようになりました。
今日では、CSRは、企業の持続可能な成長と社会の発展を両立させるために重要な経営戦略の一つとして認識されています。
本記事では、CSRの基本的な知識やよく似た概念との違い、メリット・デメリットまでわかりやすく解説します。CSRを正しく理解したい方や、自社で効果的なCSR活動を行いたい方は、ぜひ参考にしてください。

CSR(企業の社会的責任)とは

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、日本語では「企業の社会的責任」と訳される概念です。企業の活動において、社会や環境に配慮するとともに、社会に与える影響に対して責任を取ることを指します。

具体的には、法令順守はもちろん、環境保護や人権尊重、地域貢献などの活動を通じて社会へ責任ある行動を取ります。CSRは単なる慈善活動ではなく、企業の持続可能な成長と社会の発展を両立させるために必要な経営戦略の一つです。

ここではCSRの基本的な知識について理解しましょう。

参考:価値創造経営、開示・対話、企業会計、CSR(企業の社会的責任)について|経済産業省

CSRが求められる背景

CSRが重視されるようになった背景には、社会の変化と企業への期待の高まりがあります。

2000年代に入り、食品偽装や粉飾決算などの企業不祥事が相次いで発生しました。利益を優先する企業の姿勢に対して消費者の不信感が高まり、企業の社会的責任が厳しく問われるようになっていきます。

また、地球温暖化や資源枯渇などの環境問題への関心がますます高まるにつれて、消費者意識も変化していきました。デザインや価格だけでなく、環境に配慮した商品やサービスを選択する傾向が強まっていったのです。

こうした社会の変化を背景に、企業は利益追求だけでなく、社会の一員としての責任を果たすことを強く求められるようになりました。CSRは、企業が持続的に成長し、社会から信頼される存在になるための重要な要素として認識されるようになったのです。

CSRの7つの原則と7つの中核主題

次に、企業が具体的にどのような点において社会的責任を果たすべきなのか見ていきます。

さまざまな国際標準の策定を行う国際標準化機構(ISO)では、ISO26000(社会的責任に関する規格)を作成し、そのなかでCSRの7つの原則と7つの中核主題を示しています。

CSRの7つの原則 CSRの7つの中核主題
1. 説明責任 1. 組織統治
2. 透明性 2. 人権
3. 倫理的な行動 3. 労働慣行
4. ステークホルダーの利害の尊重 4. 環境
5. 法の支配の尊重 5. 公正な事業慣行
6. 国際行動規範の尊重 6. 消費者課題
7. 人権の尊重 7. コミュニティへの参画及びコミュニティの発展

7つの原則は、CSR活動を行う際の基本的な考え方を表します。例えば、「説明責任」は企業活動が社会に与える影響について説明する責任を、「透明性」は意思決定や活動の透明性を保つなどの意味があります。

7つの中核主題は、企業が取り組むべき具体的な課題です。「組織統治」では意思決定の仕組みづくり、「人権」では人権侵害の防止、「労働慣行」では適切な労働環境の整備などが含まれます。

企業にはこれらの原則と中核主題を踏まえたCSR活動を展開することが求められています。

参考:「CSR」で会社が変わる、社会が変わる P.7|中小企業庁

CSRと混同しやすい関連概念

CSRは関連する他の概念と混同されがちです。ここでは、CSRとよく似た6つの概念との違いについて説明します。

  • CSRと社会貢献の違い
  • CSRとコンプライアンスの違い
  • CSRとサステナビリティの違い
  • CSRとSDGs(持続可能な開発目標)の違い
  • CSRとCSV(共有価値の創造)の違い
  • CSRとボランティア活動の違い

順番に見ていきましょう。

CSRと社会貢献の違い

CSRと社会貢献は、どちらも企業が社会に対して行う活動ですが、主にその目的と範囲に違いがあります。

CSRは、企業の存在意義や事業の特性を踏まえた社会的責任を指し、企業の本業に関連した形で社会に貢献します。そのため、対象は従業員や顧客、取引先、地域社会などのステークホルダーです。

一方、社会貢献はより広範な貢献活動を指す概念であり、必ずしも企業の事業とは直接関係しません。地域の清掃活動や災害時の支援などがその例です。

このように、CSRは企業の持続可能な成長と社会発展の両立を目指していますが、社会貢献はより純粋な社会全体への貢献を目的としています。

CSRとコンプライアンスの違い

CSRとコンプライアンスは、どちらも企業の社会的な責任に関連する概念ですが、その範囲が異なります。

コンプライアンスは労働基準法の遵守や適切な納税など、主に企業の法令遵守に重点を置いています。

一方、CSRの範囲はより広いです。法令遵守だけでなく、環境保護や人権尊重、地域社会への貢献など、法律で定められていない取り組みも含まれます。

つまり、コンプライアンスが企業の最低限果たすべき責任を意味するのに対し、CSRは企業が自らの意思で、より広範な社会的責任を果たすことを意味します。

参考:「CSR」で会社が変わる、社会が変わる P.10|中小企業庁

CSRとサステナビリティの違い

CSRとサステナビリティは、どちらもよりよい社会を目指すという点で共通する概念ですが、主にその主体や範囲に違いがあります。

サステナビリティは、環境・社会・経済の3つの側面から、持続可能な成長や発展を目指す考え方を指します。主体は個人や団体、国などさまざまで、企業に限定されません。

一方、CSRは主に企業の活動に注目しています。企業が社会や環境に与える影響に責任を持ち、ステークホルダーの期待に応えることを重視します。

サステナビリティが社会全体の持続可能性を追求するのに対し、CSRは企業の持続的な成長と社会的責任の両立に焦点を当てているのが特徴です。

CSRとSDGs(持続可能な開発目標)の違い

CSRとSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、どちらも社会や環境の改善を目指していますが、その性質が異なります。

SDGsは国連が定めた17の国際的な目標です。貧困や飢餓の撲滅、教育の普及、気候変動対策など、2030年までに達成すべき具体的な目標が設定されています。

一方、CSRは企業独自の社会的責任を指します。各企業が自社の事業特性や社会的影響を考慮して、独自のCSR活動を展開するのが特徴です。

SDGsはCSR活動を行ううえでの方向性や指針を示しているといえます。多くの企業がSDGsの目標を参考にしながら、自社のCSR活動を行っています。

参考:SDGsとは?|JAPAN SDGs Action Platform|外務省

CSRとCSV(共有価値の創造)の違い

CSRとCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)は、どちらも企業の社会的な役割に関する概念ですが、アプローチ方法が異なります。

CSRは企業の「責任」を表す概念です。社会や環境に配慮した経営を行い、ステークホルダーの期待に応えることを重視します。

一方、CSVは「経営フレームワーク(経営手法)」を表します。社会が抱える課題を企業活動を通じて解決することで、企業価値を高めるのが目的です。

CSRが企業の社会的責任を果たすのに重点を置くのに対し、CSVは社会課題の解決と企業価値向上の両立を重視している点に違いがあります。

CSRとボランティア活動の違い

CSRとボランティア活動は、どちらも社会貢献に関連していますが、その目的や実施形態に違いがあります。

ボランティア活動は純粋な社会貢献が目的です。例えば、街頭での募金活動や登下校時の見守り活動など、個人や団体が自発的に、無償で社会のために活動することを指します。

一方、CSRは企業価値の向上も目指しています。社会的責任を果たすことで、企業イメージの向上や従業員のモチベーション向上などを図ります。

CSRが企業の経営方針や事業戦略に基づいて行われる戦略的な取り組みであるのに対し、ボランティア活動はより自発的で柔軟な形で行われることが多いです。

CSR活動で得られる3つのメリット

CSRは社会の変化や企業への期待の高まりなど、外的要因により求められるようになりました。しかし、CSR活動を実施すると企業自身にも大きなメリットがあります。

ここでは、主な3つのメリットについて解説します。

  • 企業イメージが向上する
  • 従業員満足度が向上する
  • コンプライアンス違反を低減できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

企業イメージが向上する

CSR活動を行うと、企業イメージの向上が期待できます。これは、環境保護や地域貢献などの社会貢献活動を通じて、「社会に貢献するよい企業」というイメージを確立できるためです。

例えば、環境に配慮した製品開発や地域の清掃活動への参加などが企業に対する好印象を生み出し、社会的価値を高められます。

企業イメージが向上すると、消費者や投資家といったステークホルダーからの高評価を得られ、ブランド価値の向上やファン獲得につながります。結果として、企業の競争力を高められるのです。

従業員満足度が向上する

CSR活動は、従業員の満足度向上にも大きく貢献します。自社が単なる利益追求だけでなく、社会貢献にも力を入れているという事実が従業員の誇りとなり、モチベーション向上につながるためです。

従業員は、自分の仕事が社会に貢献していると実感できると、仕事への満足度が高まります。その結果、離職率の低下や生産性の向上といった効果が期待できるのです。

さらに、意欲的に働く従業員が多い企業は、学生や転職希望者に好印象を与え、優秀な人材を獲得する機会が広がります。「社会貢献に積極的な企業」というイメージは、他の企業との差別化にもつながり、やりがいやを求める人材の目に留まりやすくなります。

コンプライアンス違反を低減できる

CSR活動は、企業のコンプライアンス違反リスクを大幅に低減させます。CSR活動を通じて、企業の内部統制やコンプライアンス体制が強化されるためです。

例えば、環境保護活動を行う過程で、企業は環境関連の法令の遵守状況を確認するようになります。また、人権尊重の取り組みは、労働関連法規の遵守意識を高めます。

こうした取り組みが日常的に行われることで、法令違反のリスクが自然と低減され、不正行為や規則違反を未然に防げるのです。

CSR活動でもたらされる2つのデメリット

CSR活動はメリットだけでなくデメリットも存在します。CSR活動の効果を十分に得るためにはデメリットの内容を理解し、適切な対策を取る必要があります。

CSR活動でもたらされる主なデメリットは以下の2つです。

  • コストが増加する
  • 人材不足に陥る

それぞれ詳しく解説します。

コストが増加する

CSR活動の実施には、コストがかかります。活動内容に応じた予算を確保しておく必要があるほか、活動を継続するための運営コストも見込んでおかなくてはいけません。

また、CSR活動は直接的な売上増加を目的としていない点にも注意が必要です。従業員がCSR活動に時間を割くことで本来の業務に充てる時間が減少するため、短期的には業務効率や利益が低下する可能性があります。

しかし、長期的に見ればCSR活動は企業価値の向上につながります。短期的なコスト増加を受け入れつつ、長期的な視点で活動を継続するのが重要です。

人材不足に陥る

CSR活動を効果的に実施するには専門知識を持つ人材が必要ですが、そうした人材の確保は容易ではありません。特に中小企業では、資金や人材の制約により、CSR専門部署の設置や専門家の雇用が難しい場合も多いです。

人材が不足した状態でCSR活動を開始すると、既存の従業員にCSR活動の負担が集中するため、本来の業務に支障をきたす恐れがあります。また、CSRに関する知識や経験が不足していると、スムーズな実施ができず、期待した効果を得られない可能性もあります。

この問題への対策として、段階的にCSR活動を導入しつつ、徐々に社内の人材を育成していく方法が有効です。また、外部の専門家や団体と連携し、不足する知識やスキルを補う方法もあります。

効果的にCSR活動を進めるポイント

CSR活動を行う際は、以下の3つのポイントをおさえるとより効果的な活動を実現できます。

  • 自社に合ったCSR活動を選択する
  • ステークホルダーとコミュニケーションを取る
  • 定期的な評価と改善を繰り返す

それぞれ詳しく見ていきましょう。

自社に合ったCSR活動を選択する

効果的なCSR活動を行うためには、自社の特性や強みを活かした活動を選択することが重要です。自社の事業と関連した活動は、より専門性が高く、影響力のある成果をもたらす可能性が高まるためです。

例えば、食品メーカーであれば食育活動や食品ロス削減の取り組み、IT企業であればデジタル・ディバイド解消のための支援活動などを行うと、効果的なCSR活動が可能になります。

また、従業員の専門性が活かせるCSR活動は従業員の参加意欲を高め、活動を継続しやすくなるというメリットもあります。

ステークホルダーとコミュニケーションを取る

CSR活動を効果的に進めるためには、ステークホルダーとコミュニケーションを取り、意見を取り入れていく作業が欠かせません。

例えば、従業員からアイデアを募ることで、現場の視点を活かした活動が生まれる可能性があります。また、顧客や地域社会のニーズを把握できると、社会的需要の高い活動や大きなインパクトを与える取り組みが可能になります。

さらに、CSR活動の成果や進捗状況に対し、ステークホルダーからフィードバックを受けることも重要です。双方向のコミュニケーションを通じて、企業は社会との信頼関係を築き、より効果的なCSR活動を展開できます。

定期的な評価と改善を繰り返す

CSR活動を長期的に成功させるためには、定期的な評価と改善が必要です。活動の成果を定期的に振り返って分析し、必要に応じて内容を見直すと、より効果的なCSR活動を実現できます。

評価の際は、数字で表せる指標(参加者数や削減したCO2排出量など)と数字では表しにくい指標(社会的影響や参加者の満足度など)の両面から分析します。また、外部の専門家や第三者機関による評価を受けるのも、客観的な視点を取り入れるために有効です。

評価結果をもとに活動の内容や規模、実施方法などを見直すと、CSR活動の質を継続的に向上できます。

まとめ:効果的なCSR活動を展開するために、エンワールド・ジャパンの人材ソリューションを活用しよう

CSRは「企業の社会的責任」を表す概念です。CSR活動は企業の持続可能な成長と社会の発展に不可欠な取り組みとして、重要な経営戦略の一つと認識されています。

効果的なCSR活動を展開し、企業価値を高めるためには、専門知識を持った人材の確保が欠かせません。エンワールド・ジャパンでは、豊富な人材データベースと専門的な知見を活かし、企業のニーズに合った人材の採用をサポートします。

貴社のCSR戦略に合致した優秀な人材を見つけ、企業の持続可能な成長を実現するために、ぜひお気軽にお問合せください。

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