アサーションとは?企業に求められる理由とトレーニング法を解説

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アサーションとは?企業に求められる理由とトレーニング法を解説

アサーションとは、相手を尊重しつつ自分の意見を適切に伝える自己表現です。建設的な意見交換や円滑なコミュニケーションにつながるため、アサーションを組織づくりに活用したい人事部や経営層の方もいるのではないでしょうか。

本記事では、アサーションの概要と企業に求められる理由、トレーニング法を解説します。アサーションを取り入れ組織力をアップしたい方は、是非ご覧ください。

アサーションとは?3つの自己表現パターン

アサーションとは、相手の意見を尊重しつつ自分の意見を述べる自己表現方法のひとつです。1950年代にアメリカで生まれた行動療法のなかで、アサーションの考え方が生まれました。

アサーションでは、自己表現を次の3つのパターンに分類し、アサーションを実現するためにはアサーティブなコミュニケーションが必要だとされています。

  • アグレッシブ(攻撃的)
  • ノンアサーティブ(非主張的)
  • アサーティブ(バランス型)

アグレッシブとノンアサーティブの中立に位置するのがアサーティブとなっており、3つの自己表現パターンを知ることで、アサーティブについて理解を深められるでしょう。

アグレッシブ(攻撃的)

アグレッシブ(攻撃的)とは、自分の伝えたいことを優先し、相手の意見を聞かない一方的な自己表現パターンです。

例えば、上司と部下の関係で、部下の提案についてフィードバックする場面を想像してみてください。部下に対し「こんな提案じゃ全然ダメ、うまくいかないよ」と強い口調で伝える上司は、アグレッシブなコミュニケーションをとっているといえます。上司の言葉を受けた部下は萎縮し、改善点がわからず悩んでしまうでしょう。上司はすっきりするかもしれませんが、部下の育成にはつながりません。

ノンアサーティブ(非主張的)

ノンアサーティブ(非主張的)は、相手を尊重することを優先し、自分の意見を伝えられず我慢するような自己表現パターンです。

先ほどの例の場合、ノンアサーティブな上司は、必要なフィードバックを伝えられず「わたしは特に意見がないけど、他の人は何か意見があるかもしれないね」と抽象的なフィードバックをしてしまう可能性があります。一見すると良好に見えますが、部下は適切なフィードバックを得られないため、上司への不信感につながる恐れがあります。上司も、適切なフィードバックができない自分に後悔することになり、良好な関係を構築できない可能性があります。

アサーティブ(バランス型)

アサーティブ(バランス型)とは、相手を尊重しながら自分の意見や気持ちを伝える自己表現パターンです。アグレッシブは相手を抑圧し、ノンアサーティブは自分が不満やストレスを溜めやすい一方、アサーティブは相互に気持ちよくコミュニケーションをとれる可能性が高まります。

先ほどの例の場合、アサーティブな上司は部下の提案に対して意見がある旨を明示したうえで「よりよくする方法を一緒に考えたい」といった声かけをします。部下は、安心して上司のフィードバックを受け入れられるでしょう。部下がフィードバックを受けて適切に修正してくれれば、上司の作業負担も減るためお互いによい結果を得られます。

企業にアサーションが求められる理由

企業にアサーションが求められる理由には、次の3つがあります。

  • ハラスメントを予防するため
  • 従業員のストレスマネジメントのため
  • 組織力向上のため

それぞれについて解説します。

ハラスメントを予防するため

厚生労働省が令和6年3月に発表した「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、過去3年間に発生した企業におけるハラスメント行為は、セクハラ以外「件数は変わらない」の割合が高く、依然として問題視されています。このような環境下で従業員にアサーションが浸透すると、適切な方法でコミュニケーションがとれるようになるため、ハラスメント予防につながると考えられます。そのため、企業にはアサーショントレーニングが求められているのです。

従業員のストレスマネジメントのため

従業員は、社内での人間関係やテレワークによるコミュニケーション不足などで、ストレスを溜める傾向があります。アサーションが浸透すると、従業員はお互いに溜めこまず自分の意見を伝えられるようになるため、ストレスマネジメントにつながります。

組織力向上のため

アサーションによる適切なコミュニケーションが浸透すると、年齢や経験を問わず活発な意見交換ができるようになります。多様な意見が飛び交うようになると、組織力向上や質の高いサービスの提供につながるでしょう。

社内でできるアサーショントレーニング

社内にアサーションを浸透させるためには、次のアサーショントレーニングが効果的です。

  • 問題解決のためのDESC法
  • I(アイ)メッセージ
  • 非言語的表現

問題解決のためのDESC(デスク)法

問題解決を行うためのアサーションでは、DESC(デスク)法が効果的です。DESC法とは、次の4つの単語の頭文字をとった言葉で、会話を進める際に意識すべきステップを指します。

  • Describe(描写する)
  • Express(表現する)
  • Specify/Suggest(提案する)
  • Choose(選択する)

4つのステップを意識して会話を進めると、アサーションを使ったコミュニケーションを実現できます。

Describe(描写する)

Describe(描写する)は、直面している状況や問題、相手の行動を言葉で描写するステップです。主観や憶測を含まず、客観的視点から事実を捉えていき、わかりやすい言葉で状況を整理します。このステップで、自分と相手またはチームのメンバーが共通認識を持てるとよいでしょう。

例えば、Aさんの資料作成が滞っており、プロジェクト全体の進行が遅れている問題の場合、Aさんに対して「Aさんの資料提出が予定より3日遅れており、全体の進行に影響が出ています」と問題を明確にします。

Express(表現する)

Express(表現する)は、Describeで整理した状況や問題、相手の行動に対して、自分の考えや気持ちを伝えるとともに、相手の考えや気持ちを聴き、共感するステップです。感情的にならないようにすることがポイントで、メンバー全員がそれぞれの意見を淡々と述べていきます。

先ほどの例でいうと、このステップではAさんに「プロジェクト全体の納期が間に合わなくなる可能性があり、心配です」と自分の気持ちを述べます。このとき、なぜ遅れているのか相手の事情にも耳を傾けるようにしましょう。

Specify/Suggest(提案する)

Specify/Suggest(提案する)では、Expressで出た意見を踏まえて、解決策や適切な行動を提案します。具体的かつ現実的に提案することが大切です。

先ほどの例でいうと、Aさんに「今週の金曜日までに資料を提出していただけますか?全体のスケジュール調整を行いたいので、ご協力いただけると幸いです。」と、相手に要求を伝えます。

Choose(選択する)

Specify/Suggest(提案する)で提案した内容が完遂された場合と、そうでない場合の結果を明らかにし、最終的な選択を行います。

先ほどの例でいうと「今週の金曜日までに提出できそうなら、ほかの業務を調整します」や「今週の金曜日までに提出できないようであれば、ほかのメンバーにお願いします」のように、相手が選択しやすいよう具体的かつ明確に選択肢を伝えます。

「金曜日までに提出できないなら、メンバーに迷惑をかけますよ。」というように脅迫的な声かけは、相手を萎縮させてしまいます。相手が自発的に選択できるよう、言葉を選びましょう。

I(アイ)メッセージ

組織内で良好な人間関係を築くためのアサーションとしては、I(アイ)メッセージを活用するとよいでしょう。Iメッセージとは、主語を「わたしは」とし、意見や要求を伝える方法です。

例えば、Aさんの資料提出の遅れによってプロジェクトが遅延している場合、納期に間に合わない可能性を伝えるために次の2通りの伝え方があります。

  • 「わたしは納期に間に合わないことが心配です」
  • 「あなたが遅れているので納期に間に合わない可能性があります」

前者と比較して後者は、相手を責めるように聞こえるのではないでしょうか。Iメッセージを利用すると、相手が責められた、または否定されたと感じるリスクを抑えることが可能です。

DESC法のExpressでIメッセージを活用すると、波風立てずに自分の気持ちや考えを伝えられるでしょう。

非言語的表現

DESC法やIメッセージは言語によるアサーションですが、言語を使わない非言語的表現もあります。非言語的表現は、視覚と聴覚に訴えるタイプがあり、以下のような種類があります。

視覚的非言語表現例 聴覚的非言語表現例
  • 視線
  • 表情
  • 動作
  • 姿勢
  • 声の大きさ、高さ
  • 話すスピード
  • 抑揚

アサーションでは、丁寧かつ明確に自分の意見を伝える必要があるため、相手の目を見てよく聞こえる声の大きさ、聞き取れるスピードで話すことが望ましいです。

例えば、枕詞に「えーと」「なんと言えばよいのか分からないですが」のような言葉を置くと、自信がないように聞こえ、ノンアサーティブな自己表現になってしまいます。

従業員のアサーティブな自己表現を促進するためには、話し方の研修を導入するとよいでしょう。

アサーションの活用場面

企業において、従業員同士の日頃のコミュニケーションだけでなく、次の場面でアサーションを活用できます。

  • 人事評価
  • 採用面接

それぞれについて解説します。

人事評価

人事評価は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを左右するため、アサーションを活用したコミュニケーションが重要です。上司は部下に対して適切に評価内容を伝える必要があり、部下は評価内容に対する疑問や要求を、その場で伝えなければならないケースもあるためです。

従業員にアサーションが浸透していると、役割にかかわらず自分の考えを伝えられ、評価に対する疑問や不満を溜めずに人事評価を進めることが可能です。

お互いに納得できる内容にするためにも、アサーションの活用をおすすめします。

採用面接

採用面接でアサーティブなコミュニケーションを発揮できると、応募者は萎縮せずに自分の考えや意見を述べられます。多くの業界で人手不足が深刻化する昨今、企業だけでなく応募者もよりよい企業への入社を目指して評価しています。面接での対応が悪いとSNSや口コミサイトに書かれることもあり、丁寧な対応が求められます。

相手を尊重する立場でコミュニケーションを行うアサーションが浸透していると、いつも通りの対応で、応募者に対する適切なコミュニケーションがとれます。

まとめ:アサーションに強い人材を確保するならエンワールド・ジャパン

少子高齢化によって人手不足が進むこれからの時代、アサーティブなコミュニケーションを社内に浸透させ、組織力の向上を図ることは大切です。そのためには、社内人材を教育しアサーションを浸透させるほかに、アサーショントレーニングを積んだ人材の確保も必要でしょう。

エンワールド・ジャパンでは、アサーティブなコミュニケーションスキルを持ったプロフェッショナル人材の採用支援を提供しています。また、適切な人材の紹介もできますので、お気軽にお問い合わせください。

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