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「競業避止義務」とは、在職中や退職後に、同業他社への就職や競合する事業の立ち上げを制限する義務のことです。転職や退職を考える際、この競業避止義務の意味や有効性について、疑問や不安を抱く方も多いのではないでしょうか。
この記事では、競業避止義務の基本的な内容から、その有効性を判断する基準、円満な退職のためのポイントまで、わかりやすく解説します。
不安や心配事をなくして転職活動をスムーズに進めるために、ぜひ参考にしてください。
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競業避止義務とは?具体例を紹介
競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)とは、在職中または退職後の従業員が、所属企業と競合する行為を行わないように課される義務のことです。企業の機密情報や顧客情報を保護するとともに、競合他社へ技術やノウハウが流出することを防ぐために定められています。
具体的には、以下のような行為が競業避止義務の対象となります。
<例>
- 研究開発部門の技術者が、競合他社で類似製品の開発に携わる
- 営業職の従業員が、独立して同じ顧客に営業活動を行う
- 経営幹部が競合する新しい企業を設立する
特に、重要な技術情報や経営戦略に関わる経営幹部や管理職の立場にある従業員が転職や独立する場合には、合理的な範囲内で競業を制限するのが一般的です。

在籍中の競業避止義務の根拠
在籍中の競業避止義務は、従業員の立場によって根拠となる法律が異なります。それぞれの立場における根拠と内容について、詳しく見ていきましょう。
一般社員
一般社員の競業避止義務は、労働契約法第3条第4項「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない」を根拠としています。
競業避止義務は、企業と従業員との信頼のうえに成り立つものであり、就業規則や誓約書において明文化されていない場合でも、当然に負う義務とされています。
そのため、例えば、在職中に競合他社で働いたり、競合する事業を興したりすることは義務違反とされ、懲戒処分や損害賠償請求の対象となる可能性があります。
取締役
取締役の競業避止義務は、会社法第356条「競業及び利益相反取引の制限」に規定されています。取締役は企業の経営に深く関わる立場にあるため、一般社員よりも厳格な制限が課されています。
具体的には、取締役が自己または第三者のために自社の事業と競合する取引を行う場合には、事前に株主総会(または取締役会)の承認が必要です。
義務違反が発覚した場合には、取締役としての責任追及や損害賠償請求につながる可能性があります。
転職後や退職後の競業避止義務の根拠
転職後や退職後の競業避止義務は、主に以下の2つの方法によって定められています。
- 就業規則での規定
- 退職時に交わす誓約書
在職中と異なり、退職後は労働契約が終了しているため、明確な根拠がない限り競業避止義務は原則として消滅します。そのため、企業が退職者に競業避止義務を課すためには、あらかじめ就業規則に明記したり、誓約書を交わしたりする必要があります。
ただし、退職後の競業避止義務は、日本国憲法第22条第1項で保障されている「職業選択の自由」と深く関わる問題です。そのため、企業側が一方的に競業を制限することはできず、その有効性は個別の事案ごとに判断されます。
競業避止義務の有効性を判断する基準については、次の章で詳しく説明します。
参考:日本国憲法|衆議院
競業避止義務の有効性を判断する6つの基準
競業避止義務の有効性については、主に6つの基準に基づいて総合的に判断されます。これらの基準は、企業の利益と従業員の権利のバランスを図るために設けられています。
それぞれの基準について詳しく見ていきましょう。
参考:参考資料5 競業避止義務契約の有効性について|経済産業省
対象者の役職や地位
役職や地位によって、競業避止義務の制限の程度は変わってきます。
一般的に、機密情報や経営戦略に携わる機会が多い経営幹部や管理職などの高い地位にある従業員ほど、厳しい制限が認められる傾向にあります。
一方で、企業経営に与える影響が限定的である一般社員の場合は、過度な制限が認められにくくなります。
禁止される競業行為の範囲
競業避止義務で禁止される行為の範囲を指定する際は、合理性や具体性が求められます。
必要以上に広範囲の行為を禁止することは、憲法で保障される職業選択の自由を不当に制限するとして、無効となる可能性が高くなります。
競業禁止の期間
競業を制限する期間は、一般的に1〜2年程度が妥当とされています。
長期にわたる競業禁止は、必要以上に職業選択の自由を制限すると判断され、合理性が認められにくくなります。
企業利益への影響度合い
企業が従業員に競業避止義務を課すには、企業側に守るべき利益があることを示さなくてはなりません。
例えば、新製品の開発に関わった技術者や、重要顧客との取引に携わった営業担当者の競業行為は、企業に大きな損害を与える恐れがあります。そのため、そのほかの従業員と比較して、より厳格な競業避止義務が認められる可能性があります。
地理的な適用範囲
競業避止義務を地理的にどの範囲まで対象とするかは、企業の事業範囲に応じて設定される必要があります。
特定の地域でのみ事業を展開している企業が、全国規模での競業避止を求めるのは、一般的に合理的とは認められません。
代償措置の有無
代償措置とは、退職金の上乗せや特別手当の支給など、競業制限の見返りとして従業員に提供される経済的な補償を指します。代償措置の有無も、競業避止義務の有効性を判断するうえでひとつの判断材料となります。
ただし、代償措置が設けられているからといって、必ずしも競業避止義務の有効性が認められるとは限りません。
円満に退職するための4つのポイント
退職は新しい人生の門出である一方で、不安や気がかりな点も多いものです。そのため、トラブルになりうるようなことは避け、できる限りスムーズに退職手続きを進めたいと考えるのは自然なことです。
ここでは、競業避止義務に関連して、円満な退職を実現するために注意したいポイントを4点紹介します。
転職先を積極的に公言しない
転職先の企業名を現在の勤務先に伝える義務はありません。
特に同業他社へ転職する場合、残りの勤務期間中に居心地の悪さを感じたり、過度な引き留めにあったりする可能性があります。
そのため、必要がない限り、転職先を自ら積極的に公開しないことをおすすめします。
誓約書はよく確認してから署名する
退職時に誓約書を交わすことになった場合、内容をよく確認してから署名することが大切です。
競業避止義務に関する条項がある場合は、転職先の業務との関連性を十分に検討する必要があります。署名は誓約書の内容への合意とみなされるため、よく確認せず安易に署名すると、自分の意図しない立場に置かれる可能性もあります。
内容に不安がある場合は、必要に応じて条件や制限の内容を交渉することも検討してください。
秘密保持義務を遵守する
在職中に知りえた機密情報は、退職後も適切に管理する必要があります。
特に経営幹部や役員など高い地位にある方は、技術情報や顧客情報に触れる機会が多いため、情報の管理には注意が必要です。
これらの情報を転職先で安易に利用した場合、以前の職場との深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。職務上得た知識はその職務に付随するものとして扱い、転職先での流用は控えるのが賢明です。
前職の従業員や顧客を引き抜かない
転職後も、以前の部下や取引先の関係者と個人的なつながりが続くことがあります。
しかし、これまでに培った関係を利用して前職の従業員や顧客を引き抜くような行為は、以前の勤務先の利益を損なう行為とみなされる恐れがあります。
損害賠償請求の対象となる可能性もあるため、誤解を与える行動は取らないよう、配慮が必要です。

まとめ:競業避止義務を理解し、転職活動をスムーズに進めよう
本記事では、競業避止義務の基本的な内容から、その有効性の判断基準、円満な退職のためのポイントなどを解説しました。
競業避止義務とは、在職中または退職後に、従業員が所属する企業と競合する行為を行わないように課される義務のことです。その有効性は一律に決められるものではなく、役職や競業の範囲、期間、地理的範囲などの要素から総合的に判断されます。
特に、経営幹部や管理職などの高い地位にある場合は、競業避止義務が厳格に課される傾向があります。もし、そのような立場で転職をお考えの方は、エンワールド・ジャパンの活用をご検討ください。
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