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近年、終身雇用制度を採用しない企業が増えていることから、自分自身でキャリアを築く力が求められるようになりました。そこで注目されているのが「キャリアパス」です。
キャリアパスは、企業内での昇格・昇進を目指すために必要なスキル・経験を示した道筋を意味します。
本記事では、キャリアパスの意味や似た言葉との違いから、職種ごとの具体例、働く側のメリット・デメリットまで詳しく解説します。キャリアパスについての理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
キャリアパスとは
キャリアパスとは、企業内で目指す役職や役割に就くために必要となるスキル・経験・資格などの道筋を示したものです。基本的には企業から従業員に向けて提示されます。
例えば、「営業部の主任になるためには、営業職として3年間の経験とチームリーダーとして1年間の後輩育成実績が必要」といった内容です。
また、キャリアパスと似ている言葉にキャリアプラン・キャリアデザイン・キャリアアップがあります。それぞれの違いについて詳しくみていきましょう。
キャリアプランとの違い
キャリアプランとは、特定の企業における昇格や昇進だけでなく、転職や起業などの選択肢を含む職業人生計画のことです。結婚や住宅の購入など、プライベートな面は含まれません。
例えば、「将来起業するために現在の職場で営業の経験を積み、起業前には○○という資格を取得する」といった例が挙げられます。
キャリアパスが企業から従業員に対して昇格・昇進に必要な指標を示したものであるのに対し、キャリアプランは個人で考える将来の目標とその計画を指しているという違いがあります。
キャリアデザインとの違い
キャリアデザインとは、仕事面だけでなく結婚や出産、住宅・自動車の購入など、プライベート面も含めた人生計画のことです。
キャリアパスのように企業から従業員に提示されるわけではなく、個人が考え計画するという点に違いがあります。また、キャリアデザインにはプライベートな面も含まれている点もキャリアパスとの違いです。
キャリアアップとの違い
キャリアアップとは、特定の分野でより高い知識や経験を得て、能力を向上させることです。企業内における昇格・昇進や転職による年収アップに役立ちます。
キャリアパスが企業内における昇格・昇進までの道筋を示したものであるのに対し、キャリアアップは能力が向上することそのものを意味する点が違いです。
なお、企業が提示したキャリアパスを実行した結果、昇格・昇進することもキャリアアップと呼びます。
【職種別】キャリアパスの具体例
ここでは、職種別にキャリアパスの具体例を紹介します。
なお、実際のキャリアパスは企業によって異なり、紹介する例と同じとは限りません。あくまでも参考程度にご覧ください。
営業職のキャリアパス例
営業職のキャリアパス例としては、以下のような内容が挙げられます。
▼チームリーダーになるためのキャリアパス
・営業担当として3年間現場での経験を積む ・月間売上○○万円を3ヵ月連続で達成する |
▼マネージャーになるためのキャリアパス
・チームリーダーとして3年間後輩の指導・育成を行う ・チームの売上目標120%を達成させる |
営業職は成果を数値化できる部分が多いため、キャリアパスにも具体的な数値が用いられることがあります。
エンジニアのキャリアパス例
エンジニアのキャリアパス例としては、以下のような内容が挙げられます。
▼プロジェクトリーダーになるためのキャリアパス
・エンジニアとして3年間の現場経験を積む ・担当プロジェクトで納期を厳守し安定した品質を提供する |
▼プロジェクトマネージャーになるためのキャリアパス
・プロジェクトリーダーとして1年以上の経験を積む ・小規模プロジェクトで予算やリスクの管理、クライアント対応などのプロジェクトマネージャーと同様の業務を担う |
エンジニアは、品質の維持やプロジェクトの進行管理といった要素が重視されます。そのため、キャリアパスにおいても管理能力が求められることがあります。
Webデザイナーのキャリアパス例
Webデザイナーのキャリアパス例としては、以下のような内容が挙げられます。
▼アートディレクターになるためのキャリアパス
・Webデザイナーとして3年以上の現場経験を積む ・WebサイトやLP全体をデザインした実績を作る |
▼クリエイティブディレクターになるためのキャリアパス
・アートディレクターとして3年以上の経験を積む ・企画やコンセプト設計に携わった実績を作る |
Webデザイナーは、作品の実績やクリエイティブの幅が評価されやすいため、キャリアパスにおいても制作物の質や表現力が重視されることがあります。
事務職のキャリアパス例
事務職のキャリアパス例としては、以下の内容が挙げられます。
▼経理事務になるためのキャリアパス
・一般事務として3年以上の経験を積む ・日商簿記2級を取得する |
▼マネージャーになるためのキャリアパス
・経理事務として1年以上の経験を積む ・後輩を継続的に教育・サポートした経験がある ・他のメンバーの進捗状況を把握し、適切にフォローできる |
事務職は、専門知識の習得や業務の正確性、周囲を支えるサポート力が重視されます。そのため、キャリアパスにおいても資格取得や協調性といった要素を評価することがあります。
企業側がキャリアパス制度を重視する理由
転職が当たり前になってきている今の時代、スキルのある人材の確保・定着が難しいと感じている企業は少なくありません。そこで、企業側は人材の確保・定着や従業員の成長促進を目指して、キャリアパス制度を導入しています。
キャリアパスを明示することで、応募者や従業員に「この企業で働くとどのように自分の成長やキャリアプランの実現につながるか」というイメージを示すことが可能です。
応募者はキャリアパスを見て、自分のキャリアプランを実現できるかどうかを判断しやすくなり、ミスマッチ防止や入社後の定着にもつながります。
また、従業員がどのようなスキルや経験を積めば次のステップに進めるかを明示することで、行動や成長を促すというのも企業の狙いです。
働く側から見たキャリアパス制度のメリット
働く側から見たキャリアパス制度のメリットを3つ解説します。

今の自分に何が必要か明確になる
キャリアパス制度があることで、入社した企業のなかで最終的に目指す役職・役割に就くには、今の自分に何が必要かが明確になります。
例えば、以下の点がキャリアパスによってはっきりするため、努力の方向性を間違えることなく行動に移せます。
- どのようなスキルを身に付ければよいか
- どのような資格を取得すればよいか
- どのような経歴を積めばよいか
また、今必要なことが明確になるだけでなく、今待っているスキルや経験がどのように活かせるのか、どのようなキャリアにつながるのかなどの判断材料にもなるでしょう。
モチベーション向上につながる
目標に対して今の自分に何が必要かがわかり、現在行っている業務も目標達成までの過程と捉えられます。そのため、モチベーションを維持した状態で仕事に取り組めるでしょう。
キャリアパスで提示されたステップを1つずつ進めるごとに、達成感や満足感も得られるようになります。
また、どのような指標で評価されているかがわからない状態では、評価に納得できなかったり不満を持ったりするかもしれません。
しかし、キャリアパスによって評価基準が明確になっていれば、自分の行動や成果がどのような評価をもたらすのかを把握できるため、実際の評価にも納得感が高まります。
このように、キャリアパスによって行動指標や評価基準を把握できるため、モチベーション向上につながります。
無理な異動や配属のリスクが減る
企業はキャリアパスがあることで、従業員が持つ能力や目標を照らし合わせながら、適材適所への配置が可能となります。
つまり、働く側にとっても苦手な業務内容やキャリアプランと大きくずれた役割を任せられることが減るため、無理な異動や配属のリスクが減るでしょう。
無理な異動や配属を避けられれば、業務効率化やパフォーマンス向上にもつながる可能性があります。
働く側から見たキャリアパス制度のデメリット
働く側から見たキャリアパス制度のデメリットは3つあります。
他のキャリアを選びにくくなる可能性がある
キャリアパス制度では、昇格・昇進のための条件が明示されているため、目標達成の近道として活用できます。 しかし、特定の役職や役割を目指すことで、場合によっては他のキャリアを選びにくくなるという可能性もあるのがデメリットです。
実際、働くなかでキャリアに対する考え方が変化することは珍しくありません。そのため、キャリアパスの条件だけを意識せず、視野を広げて仕事に取り組むことが重要です。
要件を満たしても昇進できないことがある
キャリアパス制度は、一定のキャリアに到達することを目指すためのものです。しかし、状況によっては、要件を満たしても昇進できないことがあります。
例えば、役職に空きがなければ、要件を満たしていても昇進が難しいでしょう。また、経営状況の変化によって、昇進が認められないケースもあります。
もし納得できない場合はそのままにせず、上司や人事担当者などに面談の機会を設けてもらったうえで、企業側と意見のすり合わせを行いましょう。
要件に納得できない場合がある
キャリアパスの要件を満たせば昇格や昇進につながるものの、その要件に納得できない場合があります。
例えば、キャリアパスの先にある役職に対して要件が厳しすぎるケースが挙げられます。また、5年・10年といった長期的な視点で設定されているキャリアパスの場合、すべての要件を満たしたイメージがつかず納得できないこともあるでしょう。
キャリアパスは企業によって異なるものです。これから転職を考えている方は、入社後に後悔がないよう、企業ホームページや求人情報などでキャリアパスの内容をあらかじめ確認することをおすすめします。
キャリアパスに関するよくある質問
ここでは、キャリアパスに関するよくある質問にお答えします。
キャリアパスを確認する方法は?
現在の職場でキャリアパスを確認したい場合は、直属の上司や人事担当者に尋ねてみてください。定期的に面談が行われている場合は、そのタイミングが確認しやすいでしょう。
また、これから応募する企業のキャリアパスを確認する場合は、求人サイトの募集要項や企業ホームページの採用情報などで確認できます。記載がない場合は、面接や面談時に直接尋ねることをおすすめします。
キャリアパスがない場合は?
キャリアパスがない場合は、先輩社員のキャリアアップ事例が参考になります。
どのような役職・役割に就きたいかを明確にし、キャリアアップ事例と照らし合わせながら、その目標に対して何が必要かを自分なりに考えてみてください。その後、自分なりに考えた道筋で理想とするキャリアを築けるか、上司や人事担当者に相談してみましょう。
そうすることで具体的なアドバイスが得られるほか、目標や志向に沿ったチャンスを与えてもらえる可能性が高まります。
キャリアパスとキャリアプランにギャップがある場合は?
キャリアパスとキャリアプランにギャップがあるということは、企業が提示する道と自分の進みたい道が一致していない可能性があります。そのような状態では、業務にやりがいを感じられなくなったりストレスにつながったりするかもしれません。
そのため、まずは自分のキャリアプランを見直してみてください。企業では複数のキャリアパスが提示されていることが多いため、見直したキャリアプランに近いキャリアパスがないかを確認するのも一つの案ですしましょう。
また、直属の上司や人事担当者にギャップがあることを相談するのもひとつの手段です。自分に合ったキャリアパスを提案してもらえたり、キャリアプランに沿った仕事の機会を与えてもらえたりする可能性があります。
どうしても現在の職場ではギャップが埋められないと感じた場合は、転職も選択肢として検討することもできるかもしれません。ただし、転職する場合はこれまで達成してきたキャリアパスの要件は関係なくなってしまう点に注意しましょう。
まとめ:転職をお考えの方は外資系・日系グローバル企業に強みのあるエンワールドへの登録をご検討ください
キャリアパスは、企業内で特定の役職・役割に就くために必要な道筋・要件を示したもので、企業から従業員に向けて提示されます。
働く側にとってもやるべきことが明確になったり、モチベーション向上につながったりするなど、さまざまなメリットを感じられる制度です。
そのため、現在の職場やこれから応募を検討している企業における、キャリアパス制度の有無や具体的な要件を確認してみてください。
キャリアパス制度の整った企業への転職を目指している方は、転職エージェントの活用もおすすめです。「キャリアパスを知りたい」と伝えるだけで、専門のコンサルタントが応募企業に確認してくれる可能性があります。
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エンワールド編集部
外資系・日系グローバル企業のハイクラスに精通するエンワールドの編集部員が、転職やキャリア、日々の仕事のお悩みに役立つ情報を執筆します。