第7回「金融人の転職事情」証券業界の採用動向
連載を始めさせていただき、早くも7回目を迎えることとなりました。ご感想をいただくことなども増えており、お読みいただいている皆様に改めて感謝申し上げます。
さて、今回は金融業界の中でも特に経済状況に強い影響を受けやすい証券会社の採用動向についてお話をさせていただきます。
コロナ禍における変化は非常に気になる部分ではあるかと思いますが、企業の戦略、事業のどの部分の強化に向けて動いているかに基づき、採用動向に違いが見られています。
外資系証券業界は非対面で業務を行うための、IT部門によるインフラ、アプリの強化、オンライン業務の地固めを課題としており、グローバル体制のIT化プロジェクトに対応を進めるためのプロジェクトマネージャーやビジネスアナリストなどの採用が多い傾向にあります。
日系証券会社ではクロスボーダーM&Aの好調を背景とした人員増員が推し進められています。経験のある即戦力人材が求められてはいますが、人材不足の中で良い人材を獲得したいという理由から、ある程度の金融業界の経験、比較的高い語学力(日英)があれば、採用意欲は高い、というような要件緩和の傾向も見受けられています。
反対に、営業関連の採用は新型コロナの影響を受け減少傾向です。それに伴い、証券業界から非金融業界、コンサルティング業界などに目を向け始める転職希望者が、確実に増えてきています。
オンライン証券会社の採用需要は上昇傾向にあるものの、やや様子見が多く、IT関連業務に関しても、需要の伸びは横ばいの状態にあります。
証券会社から金融業界の他の業種、あるいは、非金融業界に転職をご検討される方からよくいただくご質問の一つに給与に関することがあります。年収の減少を懸念されている方が多くいらっしゃるのですが、日本の転職市場は人材不足が続いており、採用難が課題になっていることから、5年前と比較しても、給与の交渉に関して柔軟に対応していただける企業が圧倒的に多くなっています。そのため、証券会社を離れることで必ずしも給与が下がるとは考えなくても良いかと思っています。
業界問わずですが、転職ではご自身が持つ経験、知識、市場での価値が評価されることになるため、その価値が高いと判断されれば、給与交渉ができる可能性もより高くなります。
これからのキャリアを考え、築いていくためには、現在の自分の市場価値を客観的な視点で知っておくことも非常に大切だと考えています。その尺度を知り、ご自身の可能性を広げるという意味では、今すぐに転職を考えていなくても、他企業の話を聞いてみたり、情報収集を進めたりすることは非常に有益だと考えています。
その際には是非、お気軽にご相談いただければ、業界についても色々とお話をさせて頂きます。
◆プロフィール
金融チーム チームマネージャー
玄間勇介 (げんま・ゆうすけ?)
アメリカの大学を卒業後、イギリス系の人材紹介会社で転職コンサルタントとしてのキャリアを積む。2018年にエンワールド・ジャパンへ。業界歴10年以上。金融xIT業界を専門とし、外資系、およびグローバル企業のミドル~ハイクラスの採用支援、転職支援を得意とする。
2020年10月5日号 「金融経済新聞」掲載 ※無断転載・引用を固く禁じます。